キャッ

エッセイ

 叫び声というと「うわー!」とか「おー!」とか、そんなものだろうと思う。

どうしてもわからないのが女性の「キャー!」という甲高い声の叫び声だ。私はその甲高い声で叫んだことは一度もない。

その昔、東京で初めてゴキブリを見た時の私の叫び声は、デスメタルバンドのデスボイスのように低く、野太い声で「ぬおぉぉぉ~!」と女らしさの欠片もないものだった。

幾度となくゴキブリをみてはデスボイスで叫び、同居していた彼はゴキブリより私のデスボイスが怖いようで、根本的にゴキブリが出ないようにとホウ酸団子をせっせと部屋中に置いていた。

 人はとっさにあんな甲高い声が出るものなのか?絶叫マシンでグルグル回ったり、高い所から急降下して「キャー!」と叫ぶものか?

いや、違う、私ならデスボイスだ。

お化け屋敷に行ってお化けが出てきて「キャー!」ととっさに出るか?

いや、出ない。

私ならやはり安定のデスボイスだ。

何なら私がお化け役をやった方が怖いかもしれない。

ハズキルーペのCMで、若い女性が続けてハズキルーペを踏んづけては「キャッ!」と言う。

「キャッ!」という甲高い声を出すのは、本気で驚いていない余裕すら感じる。

私はハズキルーペを踏んづけてもデスボイスは出ないにしろ、きっと「わっ!」と言うだけだろう。

ハズキルーペの強度を、女性の尻で表すとは斬新ではあるが、少し問題があるように思う。

ハズキルーペが売れなくなったのか、女性の尻が云々で苦情があったのか知らないが、ハズキルーペは見かけなくなった。

 何故、女性の叫び声は「キャー!」なのか理解ができないので、チャットGPTに訊ねてみた。

女性が「キャー」と叫ぶのは、文化的、社会的、生物学的な要因による可能性があります。文化的には、女性が強い感情を表現する際には、高い声を出すことがあるとされています。また、映画やテレビドラマ、アニメーションなどのメディアにおいても、女性が叫ぶときに「キャー」という声がよく使われることがあります。これらの影響により、女性が「キャーと叫ぶことが一般的になった可能性があります。社会的には、女性は男性に比べて声が高い傾向があります。これは、女性の声帯が男性のそれよりも短いためです。また、女性は男性に比べて感情表現の自由に対して声が高いとされており、強い感情を表現するために高い声を出すことがあると考えられます。また、声を出す際には、呼気筋肉の収縮が必要であり、女性は男性に比べてその筋肉が弱いため、高い声を出しやすいとも考えられます。ただし、個人差や文化的、社会的背景によって叫び声が異なる場合がありますので、一般論として捉えることはできません。

どうやらこういうことらしい。

私も人並みに映画やドラマは観れるけど、「キャー!」という叫び声には影響を受けなかったのだろう。

そもそも私から高い声は出ない。ゆえに歌も下手でカラオケに行くことがない。

行ってもビールをガブガブ飲んで、人の歌を聴くだけだ。

稀に歌う曲は梅沢冨美男の『夢芝居』で、盛り上がることはない。

この先の人生の中で「キャー!」が出ることはなさそうだ。

(文・ねぎ)

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