ものすごく面倒な男がいた。男は私をものすごく好きだと言う。私は一目惚れは1回したことがあるが、その男は一目惚れとはいかなかった。そもそも私は恋愛においてはゆっくりだ。いきなり人を愛せるような広い心は持ち合わせていない。何度も会って話をしても、どうしても恋愛対象にならずに、相手を傷つけてしまうこともあったかもしれない。実際、このガツガツした男はきっと傷ついただろう。
友人の紹介で知り合い、好きな音楽や、好きな映画や、好きな作家、そういうものに共通点が沢山あって、楽しい人だな、仲良くできたらいいなと思った。男はその場の飲み会で私をすごく好きになったらしく、会ったその日で付き合ってほしいと言われた。そこで二つ返事で了承できる性格だったら良かったのだろうけど、私はそういうのは慎重なのだ。
「今すぐに返事が欲しいと言うなら、お断りします。こんな数時間で私の何がわかるのですか。せっかちで成功した武将は少ないですよ。」と、返事をすると、「他の男に取られる前に告白しなきゃいけなかったんだ。でもいいよ、好きになってくれるまで待っているよ。ペース合わせるから。」と言われた。なぜ、私が他の男に取られるという思考になったのだろう?男友だちはいるけれど、みんな家族をもっているし、わざわざこんなデブスババアを好きになる人なんか滅多にいないのに…。
私のペースで良いと言うわりに、男からのLINEがすごい。会って話せばいいことを長文のメッセージでグイグイ来る。「いつ会える?」「顔が見たいな」「今朝、君の夢を見たよ。ちょっとエッチな感じ」「苦手な食べ物ある?」「本当に大好きなんだ」「早くこの想いが届けばいいな」「あれ?返信ないけどどうしたの?」「もしかして体調悪い?」「やっぱり俺じゃだめかな?」「未読スルーも既読スルーも、ものすごい精神の負担になるから通知から10分以内に返事して」「生きてる?」「おーい!」「スマホ見る時間くらいあるだろ。」等…、そして私が重い腰をあげて返事を送った瞬間に既読がつく。この人は、スマホにかじりついて見ているのだろう。私からのメッセージを読み、文字に起こすまでも速い。LINEのやり取りが面倒なので、会うことにした。話し合いの末、私は会うのは月1のペース、そして性行為をしないのであれば、付き合っても良いと答えを出した。それに対して男は性行為ができないなら恋人じゃない、付き合う意味がないじゃないかと反論した。「ならばあなたは性行為が目的で私と付き合いたいと言っているのですか?それだったら私じゃなくてもいいだろうし、そういう衝動があるならススキノで済ませればいいじゃないですか」と言ってその場は一旦帰った。
本人には言えなかったけれど、いい人ではあるけど、生理的に受け付けない。ハァハァと鼻息が荒いのも気持ち悪い。
数時間後、男からのLINEに、「俺の魅力が君に伝わらないのは、自分が本音で話してなかったからだ。もう今なら頻繁なLINEしなくてもいいし、何なら3ヶ月に1通でもいいし、会うのも半年に1回でいい。執着するのやめたから!」と極端なことを送ってきた。極端すぎて返す言葉も見つからず、このまま放置して忘れてくれることを願っていたが、またその2時間後に「俺、キツいこと言い過ぎたかな?不安にさせちゃった?今なら間に合うよ?付き合う?」「もう好きになりそうな子いるけど、大丈夫?嫉妬してない?」等とメッセージが送られてきたので、呆れ返ってしまい、ブロックせざるを得なくなった。実に無駄なことに時間を使ってしまったもんだ。
(文 ねぎ)


