スタンプ

エッセイ

 世の中は便利になったもので、LINEでいくらでも話すことができるようになった。昔は親に長電話をするなと叱られたり、こっそり電話していても電話料金でバレて叱られたものだ。そもそも次の日に学校で会う友人と長電話をしていたのが、ものすごく無意味なことだから親は怒っていたのかもしれない。

 ポケベルという便利なのか不便なのかわからないモノを持っていたこともある。実にどうでもいい一言を送るために、難解な文字入力の操作をしていた。今あの文字入力をやれと言われても絶対にできないだろう。よくまあササっと素早く操作ができたものだ。

 私は割と早めにガラケーからスマホに乗り換えていて、スマホの便利さを心から楽しんでいた。周りがどんどんスマホに乗り換えていても、中には電話とメールができればいいからガラケーで十分だという人もいた。それはそれで何の問題もない。ただ、スマホがあまりにも普及しているために、ガラケーを持っている人は少なくなってきた。ガラホという謎の物体を持っている人が周りに一人もいないので、ガラホについては何の知識もない。

 LINEといえばスタンプだ。私はスタンプを多用する人が苦手だ。本当に何を送ってもスタンプで返す人に、あなたはスタンプ無しに会話ができないのかと苦言を言ったところ、その人から連絡は来なくなった。多分、これについて私は間違ってはいないと思う。言葉には言葉で返そうよと、苦々しく思うのはもう古いのだろうか。私はスタンプを使ったことは2~3回しかない。75歳の父の方がスタンプなるものを上手に使っている。

 それなのに私はLINEスタンプクリエイターをやっている。以前、私が描いたイラストをSNSに載せたところ、イラストを見てくれた多くの方々に、「この感じでスタンプを作って売ってほしい」とリクエストがあった。スタンプの買い方すら知らないのに、作るとはどうしたものだろうと途方に暮れつつも、ものは試しで作ってみて、小難しい規制に引っ掛かったり、悪戦苦闘しながらもスタンプは完成して世に出た。リクエストをしてくれた方々は早速購入してくれて、これからも沢山作ってほしいとか、男でも使えるタッチのイラストを希望するという声があり、出来る範囲で今でも作っている。手間暇に対して報酬を計算すると、やってられない気持ちにはなるけれど、私にはこういうことしか出来ないので、これからも作り続けていくだろう。それでも自分が作ったスタンプをどういう時に使っていいのかわからない。購入してくれる方々へは悪いけれど、こんなスタンプを使って恥ずかしくないのかしら?と思ったりもするのだ。きっとこれからLINEに代わるもっと便利な何かができて、「昔LINEってあったねー、スタンプとか懐かしいね」という会話があったりするのだろう。(文・ねぎ)

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