私は家族や他人様に、男の好みが変なのと、男を見る目がないとよく言われる。私としてはかなりの面食いのように思うが、どうやら違うらしい。
私はありとあらゆる男性の中で、伊集院光が一番好きだ。

ずっと昔から伊集院光の深夜ラジオを毎週欠かさず聴き、ゲラゲラ笑って生きてきた。伊集院光と言えばクイズ番組等で、教養の高さを認められている。テレビで見る伊集院光のキャラは気の利いた言葉で笑いを与えてくれたり、岸田元総理より人の話を上手に聞く力がある優等生なキャラだ。しかし深夜ラジオでは違う。どうかしているのだ。伊集院光は劣等感や自己否定の塊で、それを逆に笑いに変えていかないとあっという間に生きていけなくなるタイプなのだ。自己否定感を強く抱えている人間には伊集院光の笑い話には頷けるだろう。
そして見た目も良い。どう見ても好感の持てる可愛らしいイケメンだ。人はこの笑顔で幸せになれないのか?太っているのも熊のようで可愛いじゃないか。この可愛いと思う気持ちはなかなか人に理解されない。昔、合コンとやらに参加したことがあり、安っぽいホストみたいな男に、どんな男がタイプなのかと聞かれ、伊集院光だと答えると、「あー頭良さそうだもんね。面白いしね。うんうん、で、見た目でいうと誰がタイプなの?」と聞くので、伊集院光だと答えた。「え?ああいうのがいいの?デブ専なの?ブス専なの?」と失礼なことを言うので「黙れ、あんたなんか伊集院光の足元にも及ばない。」と言って黙らせた。
男の好みの偏り方は国境を越えてもあるらしい。ひょんなことから友人になったフランス人のアレックスと、外国人が多いクラブへ行った。アレックスは多分一般的なイケメンで、サッカー選手のベッカムみたいな顔をしていて、沢山の彼女がいるタフガイだ。私は沢山の外国人が踊るさまをウォッカを飲みながら眺めていた。一人、目についたのが、どうやって生きているのかわからないほどガリガリで、髪がモジャモジャで、瓶底メガネの白人だ。例えて言うならガリガリのジョン・レノンだ。私は瞬時に良いなと思い、それをアレックスに言うと、アレックスはギャハハハハと爆笑して、「あんなのが良いの?冗談だろ?あれ絶対女を知らない奴だぜ?フランスであんな男に興味を持つ女なんかいないよ。」と言っていた。沢山の彼女がいるアレックスが言うならば、そうなのかもしれない。私は偏っているのかもしれないけれど、無人島に一緒に連れていくなら、キムタクより伊集院光が断然良い。こういう選別をしているから、なかなか好みの人と巡り会えないのかもしれない。その要因の8割は私の魅力の無さからきているのは百も承知だ。
(文・ねぎ)