定点観察

キャンプ

 いつもの時間にいつもの場所に着いた。
今日も晴れている。

トンビが空を旋回している。川が流れている。橋の上をクルマが走っている。この場所に居るのは僕一人。いつも吸っている銘柄のタバコに火をつける。全ていつも通り。安心した。落ち着く。毎週同じ景色をみて過ごしている。

 この川は多くの支流を有している。その中の一つが近くを流れている。40数年前その支流の上流にミンクの養殖場があった。そこから一匹のミンクが逃げ出し支流を下った。そして本流であるこの川にたどり着いた。色は黒。まだ若い個体だった。当時ぼくはこの川で釣りをしていた。その隣の藪のなかでガサゴソ音がしていたが別段気にもとめなかった。すると藪の中から黒くて胴体が30センチぐらいで足の短い生き物が出てきて僕の顔を見ながら出できたほうとは反対側の藪の中に消えていった。若くてまだ人間のことが珍しかったのだろう。

イタチとかテンに体形が似ていたが真っ黒というのは外来生物のミングだけだ。なるほどミンクか。その後そのミンクをたびたび目にした。やがて僕も転勤となりこの川を訪れなくなった。あれから40年。もうミンクは見かけない。あのミンクは一匹だけで子孫を残さずに死んだのだろう。川の中洲にカモの巣もあった。その巣も中洲ごと消えている。川の浚渫工事が進んだのだろう。あれから40年。今浦島の気分である。

 今の話をしよう。冬この近辺をキツネが歩く。それだけ。夏は姿を見ない。季節によって冬はハクチョウ、夏はアオサギが空を飛んでいるのが見える。それだけ。あんまり自然豊かとはいえないけれどここが気に入ってる。

ここで変わったことがあればすぐわかる。そりゃそうだ。なんにもないから。夜になったら河川敷に何か出やしないか?無理だろうなぁ。熊に出られちゃ逆に怖いし。キツネ、タヌキ、テンぐらいかな、つまんないけど。毎週ここに来て昼の様子は知っているけど、暗くなってからの様子は詳しく見たことがない。見てみようか。あんまり期待できないけど。だけど夜はお酒飲みたいし、カンパン食べたいし、眠りたい。そういうときのために便利な機械みたいなのないかな?

amazonで探す。検索語句は「定点観察」。

ヒットしました。しかも大量に。
トレイルカメラっていうんだって。
どれにしよう?

VANBAR トレイルカメラ 2400万画素 1920PフルHD 64カード付き

市内に人も熊も頻繁に出入りする山菜の低山がある。頂上に山の名前が書いてある標識があるそうだからその標識にこの商品をセットして、登山口で一晩野宿してみるか。熊が写るかも。

話は変わりますが、この商品を墓地にセットしたら写るかな〜。
(文・ポッキー)

※使用している写真は、Amazonから引用しています。

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