修羅場

エッセイ

昔、友人と一緒に飲みに行った時に、修羅場というものを初めて見た。

「今日は旦那が仕事で遅くなるみたいだから、ご飯付き合って!奢るから!」と友人に誘われて、私には場違いなオシャレな居酒屋へ行った。

私は穴の空いたデニムに適当なTシャツという簡素な服装だったが、店内を見回すとみんなバッチリときめている。友人も素敵なワンピースを着ていた。なんとなく恥ずかしい気持ちになったけれど、ワインを3杯飲む頃にはどうでもよくなった。

 突如、友人が斜め前の席にいる男女を見て、何も喋らなくなった。酔いが回ったのか、腹いっぱいになったのか、具合が悪くなったのかと訊くと、

「あれ…旦那。旦那がいる。何あれ…」

と友人はボソっと言った。よく見ると斜め前の席にいる男性は、確かに友人の旦那さまだった。一緒にいる女性はとても若くて可愛い。友人とは違うタイプだ。

「あの女…誰?え、何これ…浮気?」

と友人はまたもボソっと言って、顔が真っ青になっていった。次の瞬間、友人は手にしていたワイングラスを、旦那さまめがけて投げつけた。フォークやスプーン、皿、あるものをガンガン投げつけて

「○○君!何なのよ!この女誰?あんた何やってんの!?」

と泣き叫び、今度は旦那さまに殴りかかった。私は必死に止めようとしたが友人はブチキレて制御不能の状態。

「違うって!この子は会社の子だよ!何もないって!」

と旦那さまは言い訳をしたが、そこへ若い女性が

「○○さん、奥さんと別れたんじゃなかったんですか!?この状況何ですか!?私騙されてるんですか!?説明してください!」

と怒鳴り散らした。

今度は友人と若い女性が取っ組み合いになり、泥沼化。他の客も止めに入って何とか落ち着かせた。私はササっと会計をして泣いている友人を店からつれ出した。この状況で旦那さまと同じ家に帰るのは辛いだろうと思い、その日は私のうちに泊めさせた。

友人はそれからあっという間に離婚して、今は男性不信のまま生きている。 こんなドラマみたいな修羅場を見ると、浮気をするなら墓まで持っていくのが夫婦の礼儀ではないだろうかと思う。(ねぎ)

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