明るいうちに目的地に着いた。野宿の前に付近を散策する。近くに川がある。河岸に降りた。柳の木が鬱蒼と繁っている。水辺に根を張っているのに根腐れしない。水が好きらしい。柳。風水的には大凶の木といわれている。庭に植えるとその家の家運が傾く。破産したり精神に異常をきたしたりするといわれている。ただし料亭にシダレヤナギは吉とされている。そんなことはどうでもいい。流れの澱みにつがいの鴛鴦。平和そうだ。
それにしてもなぜ柳はかくも劣悪な場所(根が水に絶えず浸かっているような場所)に進出したのだろうか。あるいはそのように進化したのだろうか。
ところで、熱帯、亜熱帯に自生する植物でマングローブという種類の植物がある。柳と同じく水が好きだがマングローブは海水も平気で河岸から海岸線まで繁茂している。その理由についてこんな話を聞いたことがある。何万年も前マングローブは水には特にこだわらずジャングルのなかで他の植物とともにオシクラまんじゅうしていた。がジャングルの中の激烈な生存競争に嫌気がさし、川を下って(川にタネを落とすことによって)生息域を川伝いに広げる旅に出た。長い時間をかけて川の水によって起こる根腐れを克服(進化)した。旅はまだ続いた。海にたどり着いたのだ。ここでは水に塩分が含まれている。マングローブはこの問題も我慢強く長い時間をかけて克服(進化)した。もう、ライバルはいない。塩分に耐えられる植物は他にいないのだ。マングローブの純林が河口域、海岸線へと続くようになった。生存競争というストレスなしで生存できるようになった。という話である。
生存競争。嫌な言葉だ。僕が一人で野宿するのも人と文明すなわち競争社会を嫌ってのことかもしれない。
しかし「人」「文明」「競争」「ストレス」から完全に逃れるのは人間には不可能だ。マングローブみたいに進化する(ここでは人格改造などを指す)方法もあるかもしれないが、進化するとなれば啓発書の類を読むことになるのかな。つまらん。きっと途中で読むのをやめてしまうだろう。大げさなことは考えず「人」「文明」「競争」「ストレス」を少しの間だけ忘れることができるグッズをAmazonで探してみた。
KKLM 叫びの壺
11.5×11.5×18.2cm 重さ180g 軽量コンパクト
野宿の際にこれを持っていって壺のなかにむかって叫ぶことで気持ちをリセットすることにしよう。
余談ですがユダヤ教に「嘆きの壁」というのがあります。興味のあるかたもない方もググってみてください。
(ポッキー)
※使用している写真は、Amazonから引用しています。